私の空を這いずる記

【読書記録】漱石の怪奇なエピソードを集めた『漱石ホラー傑作選』

『漱石ホラー傑作選』

夏目漱石∥著
長尾剛∥編
株式会社PHP研究所∥発行

2019年7月12日 読了

 

あらすじ

夏目漱石の数ある作品の中から、ホラー・オカルト色の強いお話を集めた傑作集。

『吾輩は猫である』の中からの抜粋や、漱石のホラーものとして知られる短編集『夢十夜』、また漱石のエッセイの中からの抜粋等、漱石の「怪談」を堪能出来る傑作集。

 

感想

この本は、夏目漱石の短編・長編小説やエッセイ等からホラー・オカルト色の強いお話を抜粋し、まとめた傑作集です。
誰もが知っている、一度は読んだ事・手に取った事がある作品から、あまり一般的ではない作品まであります。

選ばれている作品は以下。

  • 『三四郎』
  • 『夢十夜』
  • 『永日小品』
  • 『門』
  • 『硝子戸の中』
  • 『変な音』
  • 『吾輩は猫である』
  • 『思い出す事など』
  • 『趣味の遺伝』

 

『三四郎』『夢十夜』『門』『吾輩は猫である』は有名どころではないでしょうか。
これらと『永日小品』『趣味の遺伝』は小説になります。『思い出す事など』『硝子戸の中』は随筆です。

 

漱石の作品の中でホラーものとして有名なのは『夢十夜』でしょうか。
タイトルの通り、10編からなる短編集です。
「こんな夢を見た」の書き出しから始まり、それぞれ神代・鎌倉・現代(明治)・未来の不思議な夢のお話です。ホラーものですが、不思議なまた幻想的な内容のお話もあります。短編集ですし、ホラー・オカルトが苦手という人でも読みやすい作品だと思います。

今回読んだ『漱石ホラー傑作選』は、ホラー傑作選と銘打たれているものの、読んでみるとホラーというより不気味な・不思議なお話が多いです。
また、『思い出す事など』は漱石の闘病記なので、漱石の臨死体験を綴っている、ちょっとリアルな怖さがあります。

が、身構えて読む必要はありません。笑。

 

各作品に編者による簡潔なあらすじと「鑑賞のヒント」として解説が載っています。
これが分かりやすい。

どういった作品で、どんな場面を抜粋したのか、読む際のポイント等を短く書いてくれています。正直、このあらすじと解説がないと、物語全編を載せている訳ではないので、抜粋の前後や登場人物について全編通して読んだ事のない人には分かり辛く読みにくくなったと思います。

あらすじは抜粋の前に、解説は抜粋の後に載っているので、その抜粋された作品に対してより理解が出来ると思います。

解説を読んで、「そういう意図があったのか」と気付き、もう一度読み直してみるのも面白いかもしれませんね。

 

 死んだら、埋めてください。大きな真珠貝で穴を掘って。そうして天から落ちてくる星の破片(かけ)を墓標に置いてください。そうして墓の傍に待っていてください。また逢いに来ますから
『夢十夜 第一夜』より

 

死を単純に「恐ろしいだけのもの・逃げたいだけのもの」とはとらえず、そこに何かの意味を見出そうとしていました。本文庫には収めていませんが、ある一つのエピソードの中では「死は生よりも尊い」という意味深なキーワードが、示されています。
『硝子戸の中』鑑賞のヒントより

 

 

夏目漱石∥著
尾長剛∥編d

 

 

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