私の空を這いずる記

【読書記録】生きる勇気を知恵をくれる『無人島に生きる十六人』

『無人島に生きる十六人』
須川邦彦∥著

 

あらすじ

 明治31年、16人を乗せ『龍睡丸』は太平洋に乗り出すが、パール・エンド・ハーミーズ礁付近で座礁してしまう。無事、近くの無人島に避難した16人は船長を中心に工夫し、協力しながら無人島生活を送る。
再び日本に帰るまで決して諦めない、実話の物語。

 

ざっくり感想

Amazonにてオススメ本としてトップに上がっていて、primeの無料サービス対象になっていたのもあり、気になって読んでみました。

読んで良かった!

想像以上に面白くて、サクサク読めました。

 

この本の作者は商船学校卒業後、商船会社に勤め、日露戦争・第一次世界大戦にも従軍した海の男。物語の内容は、作者が商船学校時代に教官だった中川先生から聞いた体験談を綴ったものです。

明治31年秋、中川先生が船長を務める帆船『龍睡丸』は、漁業調査の為、小笠原諸島方面に乗り出します。乗組員は、船長含め16人。
中には帰化人も含まれていて、小笠原島に住むアメリカの捕鯨船員の子孫だそうです。
当時も日本を慕って帰化する人が居て、周りも同じ日本人として彼らと接していたのだと知れました。

さて、漁業調査に出た『龍睡丸』。
無人島生活を送る前に、新鳥島付近で大西風に吹かれて難破しかけ、大きく東へ流されてしまいます。船の修繕が必要だった為、ホノルル港へ向かう事になります。
『龍睡丸』は帆船の為、風に逆らって日本へ戻るのは困難と判断したんですね。
これが第一の苦難です。

無事にホノルル港へ入港し、修繕を終えた『龍睡丸』は、再び太平洋へ乗り出します。
日本へ針路を向けるのではなく、飲み水確保を考えて島伝いにミッドウェー島へ寄る針路をとります。
この航海の間、鮫を釣ったり亀を捕まえたり(どちらも食糧)。急ぎの航海の中にも楽しそうな場面が綴られています。
かと思いきや、パール・エンド・ハーミーズ礁付近で大波に煽られ流され、ついに暗礁に乗り上げてしまいます。
これが第二の苦難です。

何とか16人全員が近くのサンゴ礁の島へ避難する事が出来るのですが…
ここからが本番。無人島生活の始まりです。
先ずは飲み水と食糧の確保が急がれます。船長が中心となり、役割を与えるのです。最初に井戸掘りの仕事に就いたのは16人の中でも腕っ節の強い4人でしたが、硬いサンゴ礁の地面なので掘るのに大変苦労します。何度も挑戦してやっと得た水は真水ではありませんでしたが、喜びと達成感は言うまでもなかったでしょう。

 

さて、無人島生活を始めるにあたって、船長は皆に4つの約束を話します。

一つ、島で手に入るもので、くらして行く。
二つ、できない相談をいわないこと。
三つ、規律正しい生活をすること。
四つ、愉快な生活を心がけること。

三つ目までは分かります。
四つ目の「愉快な生活を心がけること」って凄いですよね?
もし自分だったら、訳分らん無人島でいつ救助の船が来るか分からない。もしかしたらずっと来ないかも知れない。日本に帰れないかも知れない。という不安がいっぱいで愉快になんてなれないでしょう。
しかし、船長は、いままで無人島で死んでいった人たちは「じぶんはもう、生まれ故郷には帰れない、と絶望してしまったのが、原因」だから、一人の気も弱らない様に「げんかくな規律のもとに」「しかも愉快に」男らしく暮らしていかねばならない、と考えていたのです。
そして、船長や年長者たちが「青年たちを、しっかりみちびいていきたい」と語ります。

流石、船長。俺たちにできない事をやってのける!そこに痺れる、憧れるッ

実際、皆はこの約束をしっかりと守って無人島で暮らすのです。

 

流れついた船の廃材で見張り櫓を作ったり、食べられそうな植物を探したり、ウミガメの牧場を作ったり――
見どころがたくさんあるのですが、私が「おー、凄い」と思ったのは、野生のアザラシと交流しなかよくなり、或いは友情を育む船員がいた事です。
本当に愉快な生活をしているんだなぁと感心しました。

もちろん、ただ暮らして救助を待っている訳ではありません。日本語と英語で船の名前と乗組員数、場所を書いた板や帆布を海に流したり、同じく銅の札を鳥の首にかけて飛ばしたり。これの文字を書く為にウニの針をチョークにしたり、インクなんかも作っちゃう。
創意工夫が凄いのです。
生きる為。帰る為。

 

最初から最後まで飽きずに読む事が出来ました。緊迫の場面と緩い場面の差がなんとも絶妙ですね。
愛だの絆だの謳う作品は好きではないのですが、この物語は16人の努力と絆あってこそ生まれた傑作だと思います。

海の男の生きる術と日本に帰る事を決して諦めない強い意志。
リーダーシップとは何かを考えさせられます。

大人はもちろん、中高生やこれから大一番を控えている方にもオススメの一冊です。

 

「われわれが、この無人島にいた間、さびしかったろう、たいくつしたろう、と思う人もあるだろう。どうして、どうして、そんなことはなかった。(中略)ものごとは、まったく考えかた一つだ。はてしない海と、高い空にとりかこまれた、けし粒のような小島の生活も、心のもちかたで、愉快にもなり、また心細くもなるのだ。」

「一人のすることが、十六人に関係しているのだ。十六人は一人であり。一人は十六人である」

 

終わり。

 

 

 

 

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